↓これの続き
01)地雷
パターンその1
人は見たくないものがあるとフタをします。
穴の中に放り込んでフタをします。
見たくないものに遭遇するたび、放り込んでいきます。
穴はいっぱいになります。
フタをしきれなくなります。
あるとき、爆発するかのようにフタが弾かれ、穴の中身が溢れかえります。
パターンその2
傷があると痛いので、絆創膏を貼ります。
傷の存在をしばし忘れてしまいます。
しかし、なんかの拍子にそこに強い刺激が加わると、治ってないので痛いです。
忘れていた、その存在が不快なものを思い出させるのが、地雷です。
お料理上手な妻がおりました。
好き嫌いの多い夫がおりました。
夫婦は貯金をするために節約をすることとなりました。
夫はお小遣いを増やせない代わりに、お弁当を持っていくことにしました。
妻がお弁当を用意しようとすると夫は、自分でやるからいい、と断りました。
夫の自作弁当は、冷凍食品を詰めただけのものでした。
そのお弁当が地雷となりました。
妻が地雷によって思い出させられたこと、それは自分に全く手をかけてくれない母の仕打ちでした。
あんなこと、そんなこと、いっぱいあります。
地雷が思い出させたこと、それは冷凍食品が詰められただけのお弁当でした。
まわりのクラスメートのそれと自分のものは、似て非なるものでした。
自分は手をかけるに値しない存在なのだ、とずっと思っていました。
弁当なんか自分で作れよ
おっと、ここはそんなことを言う場ではありません。発言をお控えください。
他者が当たり前のように受け取っているものが、自分には与えられなかった。
お母さんが私を思って作ってくれるお弁当が欲しかった。
欲しかったものが欲しかった人から得られなかった欠落感、これをコネクトロンでは「穴ぼこ」というのです。
夫の自作弁当を見て、妻のフタが弾かれました。
中から噴き出したのは、愛されていなかった自分、大切にされていなかった私。
突然泣き出す妻に当惑する夫。
お母さんのお弁当、いつも冷凍食品だった、と泣きじゃくる妻に、「僕はそんなの惨めだと思わないよ」と。
これは私の感じたことですが、妻が「惨めだった」と口にしたならいざ知らず、そうでないのに「惨め」という言葉を引っ張り出してくるとこに、夫の本音があるのではないかと。
夫の学生時代のお弁当はきっと、冷凍食品が詰められただけのものではなかったのでしょう。
よかったですね。
念のために、妻がお母さんから受けた仕打ちは、冷凍食品弁当に限りません。
冷凍食品弁当はあくまでトリガーです。
妻は冷凍食品を食卓に並べることを潔しとしていなかったことでしょう。
そんなもの、大切な夫に食べさせてたまるものか。
リベンジの炎が妻の心の中でメラメラと燃え上がります。
自分のお料理への気持ちの底に、リベンジがあったことに気づきます。
みなさんご存知のように(知らんか)リベンジ、復讐劇とは決してハッピーエンドにはならないのですよ。
お料理が復讐の手段だった。
それが夫に受けいられれるはずもありません。
夫が妻の料理を拒んでいたのは、それが妻の母への復讐だったからです。
地雷のおかげで気付けました。
お料理は復讐の手段ではなく、大切な人を思ってのものであることを。
妻と夫の食卓の光景が、地雷前とはまったく異なるものになったのは言うまでもありません。
not revenge, but love